建設コンサルティングに関する研究レポート

ポスト311の土地活用

2011.03.22

3/11の東北・関東大震災は地震、津波、放射能と未曾有の被害と経済的ダメージを我が国に与えました。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げると共に、被災された方々に心からお見舞いを申し上げる次第です。
震災後、約一週間は自宅勤務を原則とした業務体制としたこともあり、わたくし自身、担当している取引先の方々と直接お会いし、比較的しっかりとした時間をかけてディスカッションする場を多く持ちました。
そのなかで、土地活用に関するコンサルタント業務を行う立場として、ポスト311とも言える新しい視点をもって全てを再考していく必要性を感じています。

例えばいまわたくしは西日本の某県の企業誘致の活用計画を検討していますが、311以前は当然ながら「この土地はどう活かせるか」という視点で市場データ等を用いながら検討していました。しかし311後、作成していた資料の多くを破棄し、「今、この国に必要なことは何か」というテーマで依頼先企業と議論を重ねました。メインとなるキーワードは「BCP(事業継続計画)」です。

当社もいくつかのまちづくり系NPO法人と御付き合いがあるため、その活動を通して、被災地域への物資的支援等を行っています。しかしながらコンサルタント事務所としては、企業の事業継続のために、持てる建設・不動産面のスキルを投じていくということが、与えられた役割であろうと感じたからです。

第一には、言うまでもなく今回の被害への対応です。被災した生産・物流拠点をリストアップし、被害状況を洗い出すとともに、リースバック等の仕組みで改修・建替え・移転を支援していく必要があります。

第二には、原発周辺への対応です。今後どのような状況になるか全く予測がつきませんが、実際の影響がどうであれ、一定の被害(残念ながら風評面を含めて・・・)は免れないでしょう。そうなれば、特に食品関係の生産・加工・物流拠点は、移転を検討せざるを得ないでしょう。そのためのソリューションも必要となります。

第三には、電力に関する見直しです。冷静にみれば、原子力政策が完全に見直されることは困難かもしれません。しかしながら、メガソーラー発電や風力発電等が、これまで以上に見直される可能性は高いと考えます。
また、電力の使い方についても、国民の多く(特に関東以東)が真剣に考えるようになっています。あらゆる商品やサービスについて本当に必要か否かをあらためて考える風潮が「ニーズ」として見えてくるのであれば、そこに新たな市場性が生まれます。建設・不動産分野としても、その流れを敏感に受信し、事業計画への影響を検証する必要があります。一コンサルタントとしては、むしろこれを機として、環境保全型の国づくりが推進すれば・・・との期待感すらあります。

第四には、「日本でなければならないのか」「次はどこか」といった視点です。外資系をはじめ、(電力や原子力の関係もあって)東京という立地を見直す考え方が広がっています。いまは若干ヒステリックな感も否めませんが、広くアジア地域にビジネス展開しているグローバル企業にとっては、「この、プレートの境界にある極東の小さな島にわざわざ拠点を設ける必要があるのか」という考えに至ったとしてもおかしくありません。
市場ボリュームは圧倒的に中国・インドなのですから・・・。
また国内企業についても、「つぎはどこか」という視点(次も起きるという前提)で、事業継続計画を構築しなくてはならないと思います。すでに一部優良企業は実施しているように、拠点を分散したり、バッファーとなる拠点を準備しておくという発想も、より広がるでしょう。
しかしながら当面の利益に直結しないそのような設備投資は、一部優良企業を除き、体力的に耐えられないでしょう。したがって、保険やファンドを組み合わせた仕組みが、そこに機能するのかもしれません。

そして第五には、「ここ日本で行う意義と意味」という視点です。特に製造業の場合、「日本企業製」の多くは既に国外で生産されている比率が高くなっていますが、そのなかにあって、「日本製(メードインジャパン)」は、今後、より高い価値を付加していかなくてはなりません。人件費や燃料費が高く、地震リスクもあるこの島で作られる商品は、「特別」な存在でなければならないのです。
われわれがイタリア製の鞄やスイス製の時計、フランス製のワインに、高額な対価を支払うように、世界中の人々が、日本で作られた商品に、特別な価値を評価し、高額な対価を支払うようにならなくてはなりません。
それはアクセサリーやファッションから自動車まで全てにおいて必要です。
逆に言えば、「ここでなくても良いもの」をピックアップすることになるのかもしれません。

・・・このようなディスカッションを311後、取引先企業の方々や、コンサルタントの仲間と繰り返し議論しています。
まだまだわたくし自身混乱していますが、一つだけ思うのは、今回のこの未曽有の災害が、われわれ日本人に、再度、「ものごとを根本から考える機会」「自らの言葉で考えを述べ、交わし合う機会」をもたらしているという実感です。
そして、それが、(いつものように)一定期間が過ぎれば何もなかったかのように平常にもどる、・・・つまり進歩しないことに陥らないように、可能な限り、身近な議論を繰り返していきたいと強く思う次第です。

2011年3月22日 取締役プロジェクトマネージャー 原 拓也

担当者名
原 拓也
 
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